米ワシントンで演説するトランプ大統領=1月6日(ゲッティ=共同)
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トランプ米大統領が66の国際機関から脱退する大統領覚書に署名した。気候変動対策を話し合う国連の枠組みなどが対象だ。「進歩主義的なイデオロギーに支配され、米国の国益に反している」というのが理由である。
だが、資金力や影響力の大きさで群を抜く米国が不在となれば、覇権を追求する中国の負担割合が1位になる組織が増え、存在感が一段と高まりかねない。それが国際秩序を揺るがすことを懸念する。
バイデン前政権で気候変動問題を担当したケリー元国務長官は、今回の脱退は世界最大の温室効果ガス排出国の中国に対する「贈り物」だと批判した。他分野も同様ではないか。トランプ政権は離脱が真に国益に資するのかを考えるべきである。

問題を抱える組織があるのは確かだ。例えば米政権が既に脱退を表明している世界保健機関(WHO)である。新型コロナ禍の発生源となった中国は迅速に情報を開示せず感染を世界に拡散させたのに、テドロス事務局長は中国の対応を称賛し、緊急事態宣言の発出が遅れた。
今回の対象には、国連女性機関(UNウィメン)や国連人口基金などもある。トランプ政権が否定的な気候変動対策やジェンダー平等に取り組む組織が多く、ルビオ国務長官は「業務範囲が重複しており、不必要で無駄が多く、ずさんに運営」されていると批判した。
そうだとしても、脱退で問題を放置するのではなく、中立で公正な人材配置などの改革を自ら主導することが米国の利益につながるのではないのか。

米メディアによると、トランプ政権は国際電気通信連合(ITU)や国際海事機関(IMO)、国際労働機関(ILO)など国際基準の設定を担う組織については脱退せず、米国の影響力を拡大させて中国に対抗するという。ならば他分野においても、米国の意向を反映させる余地をもっと検討すべきだ。
木原稔官房長官は会見で、米国の脱退表明への直接的な評価を避けた上で、「米国が国際社会で果たしうる役割は重要だ。米国を含む各国と、国際社会のさまざまな課題について連携する」と述べた。
国連や国際条約を重視する外交政策を掲げてきた日本政府は、米国と国際機関をつなぐ役割を今こそ果たしてほしい。
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2025年1月10日付産経新聞【主張】を転載しています
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